ブランディング戦略によってカテゴリーキラーを生み出し、さらにカテゴリーブランドを確立させることは、とても大切です。
では、“世界最強のカテゴリーブランド”を創りあげた企業とは?
それは『マッキントッシュ(Mac)』や『iPhone』で知られるアップル社です。
このアップル社が、いかにして“世界最強のカテゴリーブランド”を誕生させたのか、その歴史を紐解いてみましょう。
目次
アップル社のスティーブ・ジョブズ追放劇
今でこそ“時価総額1位の座”に輝いたことがあったり、MacやiPhoneの売上も好調な世界的企業として大きな知名度・規模を誇るアップル社ですが、実は一度潰れそうになったことがあったことをご存じでしょうか?
そんな時代の教訓が、今日のアップル社を築いたと言っても過言ではありません。
アップル社と言えば、やはり創業者であるスティーブ・ジョブズの功績がとても大きいですが、そのジョブズ氏は一度、アップル社を追放されています。
しかも1986年から1997年、およそ11年もの長い間追放されていたのですが、この間アップル社はこれといったヒット商品を生むことができませんでした。
ジョブズを追放したアップル社の経営事情は・・・
まさに“闇の時代”とも言える11年間、アップル社の業績は悪化しました。
ヒューレットパッカード製のプリンターや、「ニュートン」というPDA(個人用携帯情報端末)の販売や、アップル社のOSのライセンス事業などで、わずかな利益を上げていた程度。
その結果、会社の売却を本気で考えた時期もありました。
カテゴリーキラーに集中したジョブズ
1997年にアップル社に復帰したスティーブ・ジョブズ氏は、様々な改革を行いました。その改革こそが、まさに“カテゴリーブランドの確立”だったのです。
ジョブズ氏がまず行ったのは、これまでアップル社が売ってきた商品の見直しと、リストラでした。
そして、起死回生の策として、長い歴史を誇るアップル社が、経営資源のほぼ全てを注ぎ込んだ商品、それが「iMac」です。
インターネット時代を見据えた、CDやフロッピーディスクとの決別。さらには個性的なデザイン。
1998年に発売されたiMacは、それまでにない画期的なパソコンとして大成功を収めました。
そこからiMacは、アップル社にとっての「カテゴリーキラー」となったのです。
続々と生まれたアップル社の「カテゴリーキラー」
さらにiMacがヒットすると、今度はiMacのカラーバリエーションを増やします。
大ヒットによってまずはiMacを多くの消費者に印象付けると、そこから一気に「カテゴリーブランドの確立」に着手します。
iMacのヒットにより、アップル社はカテゴリーキラーを手に入れました。
その後、アップル社がカテゴリーブランドの確立に成功したのはiMacの成功によって得た信頼を、他のデバイスに与えることでした。
iPodとiPhoneの大ヒット
2001年に登場したiPodもまた、大ヒットを記録した商品です。
当時、まだまだ携帯型の音楽プレーヤーは大手が参入していませんでした。
「音楽配信」という考え方がまだ広まっていなかった時代、「ネット上から入手したデータを聞く」という習慣そのものが定着していませんでした。
アップル社は、そんな時代に携帯型音楽プレーヤーである『iPod』をリリースしました。
“i”という文字から、「これはAppleの商品だ」とは誰もが理解したことでしょう。
そのiPodは、携帯型音楽プレーヤーの普及のみならず、「ネット配信」というサービスそのものも定着させてしまったのです。
さらに、2003年に音楽配信サイト『iTunes Store』をスタートさせると、iPodの利便性も高まりました。
そして、2007年にあの大ヒット商品が登場します。
そう、『iPhone』です。
最強のカテゴリーブランド『iPhone』
iPodの登場から6年後の2007年、あの『iPhone』が登場します。
今から考えると、登場当初は使い方がよくわからなかったり、使いづらい面も多々ありましたが、今ではもう説明不要の商品となりました。
現代社会では、iPhoneを見ない日などないかもしれません。
iMac、iPod、iPhone。
アップル社はこうして、身近な電子機器という大きな「カテゴリーブランド」の確立に成功したのです。
アップル社の強みとは?
スティーブ・ジョブズ氏の登場によって、世界屈指の大企業となったアップル社。
では、そんなアップル社が持っていた強みとは一体何なのでしょうか?
ハードウェア:デザインの美しさ
アップル社の製品が好きという人のなかには、そのデザインの美しさに惹かれている人も少なくないですよね。
iMacに始まり、iPodやiPhoneなどそれまでの電子機器にはない、斬新なデザインがアップル社製品の魅力のひとつです。
「アップル社の製品を使う=かっこいい」というイメージを持っている人もいますよね。
ユーザーにそれだけのイメージを、アップル社は植え付けたのです。
ソフトウェア:アプリの充実
iPhoneをはじめとするアップル社の商品といえば、豊富なアプリケーション(アプリ)の充実も大きな魅力です。
また、iPodを媒介とした音楽配信サイト『iTunes Store』など、便利な連携も重要なポイントですね。
結果、アップル社はiMacのようなパソコンカテゴリーだけでなく、iPod(音楽)、iPhone(電話)、Apple Watch(時計)をはじめとして、さまざまなカテゴリーにおいて「カテゴリーキラー」「カテゴリーブランド」を生み出してきました。
それがアップル社の・・・スティーブ・ジョブズ氏のブランディング戦略だったと言えます。
Appleという「世界」での共通項
Apple製品は連携が楽です。
iPhoneのデータは同じアカウントであればiTunesにネット経由で転送されます。
iPodで聞く音楽の編集、iPhoneの画像や動画の整理・編集。
これらの連携が優れています。
iPadやiWatchでも同様です。
Appleの製品であれば「他のApple製品と連携が簡単」という点も強みと言えるでしょう。
成功する企業の原則とは?
世の中には、成功する企業の「法則」や「ルール」といったものが溢れていますが、このアップル社をはじめとする企業の成功には、一つのパターン、プロセス、原理原則が存在しているように思います。
その原理原則を経営に生かし、圧倒的に差別化された商品やサービス、事業を連続的に生み出し、自社独自の市場を創り出すことによって、長期的な事業成長が可能になる。
これが、まさに企業経営を成功させるブランディング戦略なのです。