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企業のブランディング事例~中小企業の経営者に求められる判断

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中小企業の経営者は、常に大きな選択を迫られるものでしょう。
社長の判断は、自社の商品が売れるか売れないかを分けることにもなる、重要なものです。

そこで、強い想いとやりきる覚悟でプロジェクトを進めている場合、時には大手バイヤーの意見を鵜呑みにしないほうがよいこともあるのをご存じですか?

ブランディング戦略の事例とともに、中小企業の経営者が下すべき判断についてご紹介します。

ブランディング 事例 中小企業

カテゴリーキラーとポジショニング

カテゴリーキラーとは「競合他社を圧倒する差別化された強い商品・サービス・事業」のことをいいます。

成長して成果を上げていく事業は、ブランディング戦略のもと、カテゴリーキラーを常に生み出しています。
ビジネスにおいては、時代や顧客のニーズに合わせながらブランディング戦略を継続することが重要です。

そして、顧客が本当に求めている分野において、かつ競合が手を出さない状況、手が出せない領域をどんどん掘り下げていくことで、唯一無二の企業になっていきます。

そこでカテゴリーキラーとポジショニングの概念は、どんな業種の企業でも必要になります。
この2つの概念を意識し続けていれば、どんなプロジェクトも成功する可能性があるのです。

ポジショニングの確立事例

それでは、ブランディング戦略に則ったポジショニングの実例をご紹介しましょう。

H社は、創業から100年にわたってカテゴリーキラー商品である電気はんだごてなど、さまざまな業務用商品を生み出しています。

この電気はんだごては、電気が通電して必要な温度帯になるまでの時間短縮について何十年も研究を続け、改善を積み重ねてきている実績があります。
ですので、競合他社の商品と比較しても、通電から加熱までの時間が圧倒的に速い商品なのです。

ブランディング 中小企業 ポジショニング

H社については、こちらの記事もご参照ください。
企業のブランディング事例~売れないものを売るためのシナリオ
企業のブランディング事例~売れるためのアイデアを社内で生み出す方法

H社は「電熱機器に特化している」という強みを、うまくこの生活家電につなげていけないかと考えました。
そこで検証した結果「創業100年の業務用電熱メーカーが、一般家庭用につくった家電」という、家電業界内のポジショニングで、小型生活家電を売り出すことになりました。

これは「もともと家庭用ではなく、業務用に電熱機器をつくってきた技術力」という強みを活かしたポジショニングです。

ブランディングで社長が下した決断とは?

H社の新プロジェクトでは、メイン商品のカラーにはゴールド(金色)が採用されました。
また、ネーミングもこれまでは型番しかなかったですが、誰もが振り向くインパクトのあるユニークな商品名が採用されました。

開発段階から何度も工場とやりとりをして、細部の機能、ゴールドの色の出具合など様々な検証をしていくとともに、ロゴマーク、パッケージデザイン、パンフレットデザインなども大幅にリニューアルしました。

しかし、まだ商品リニューアルが完了する前に、営業マンが企画書とサンプルを持って、ある大手小売店のバイヤーにヒアリングに行ったところ、大手バイヤーはこの企画されたカラーにもネーミングにも難色を示したといいます。

営業マンはしょんぼりして、社長にこう進言したそうです。

「バイヤーが難色を示したので、この案はやめましょう」

しかし、社長はユーモアたっぷりに、こう答えたのです。

「いつも売れない営業マンの意見を聞いて売れない状況が続いているのだから、今回は、あなたの意見と逆のことをやってみよう」

そして本当にそのプランが採用され、ゴールドの生活家電は形になっていきました。
結果、この社長の選択は、H社の未来を切り開きました。

時には、社長は大手バイヤーの意見を聞かずに決断することも必要なのです。

社長の決断により売上は10倍に!

H社の発売したゴールドの生活家電は、売り出した直後から、前年同月比で10倍以上の売上となりました。

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商品のリニューアル後に、メディア各社に新商品案内としてお知らせをしたところ、最初に、日経MJ(新聞)の新商品コーナーで多数紹介されている記事の中でも一番大きく取り上げられ、大きな話題性を呼びました。

新聞や雑誌で注目されてくると、次はテレビ番組もその商品に注目します。
そして全国ネットのニュース番組や、ビジネス番組にも取り上げられ、認知度は一気に上がりました。
すると大手小売店からどんどん注文が入り、結局、生産が間に合わないほどの売れ行きになったのです。

数千台から10万台の大ヒット商品

大きな話題となったH社の商品発売から1年後、日経MJの第一面で、「中小製造業、転身し、ヒット商品」という大きな見出しで紹介されました。
日経MJは、流通業に携わる多くのバイヤーが目を通しているため、この新聞の第一面で紹介されるというのは大きなインパクトとメリットがあるのです。

H社の商品は、その後もメディア各社に度々取り上げられ、売上はうなぎ登りでした。
小売店各所で売り切れになり、現場は嬉しい悲鳴の連続。
私もいくつかの小売店の店頭を見に行きましたが、値札のところに「しばらく入荷待ち」とお知らせがあり、本当に勢いよく売れる商品に変身していました。

当初は年間数千台しか売れなかった商品が、数年で10万台以上売れるまでになり、H社の立派なカテゴリーキラー商品となりました。

会社の危機を救った社長の決断

H社の社長は、今でもこう言います。

「あの時、カテゴリーキラーを生み出せなかったら、今の会社はなかった」

何十年と続けて商売をしている企業の多くが、事業を継続していくうえで、まわりの環境や顧客のニーズが変わり、転換期を必ず迎えます。
その時、企業はその転換期をうまく乗り越えられないと、事業存続が難しくなることもあります。

企業の転換期に上手く舵を切るのが経営者の仕事ですが、H社は売上など目先のことにとらわれずに、しっかりブランディングに注力した結果、次の方向性を見出すことができたのです。

強い想いとブランディングの意識が成功を導く

H社がカテゴリーキラーを生み出すに至るまで、実に1年以上の時間がかかっています。
その間、H社の社長は「このまま進めてもよいものか」と途中で不安になった時期もあったそうです。

しかし社長には、「時間はかかるけれども、正しい方向に進んでいる」という確信もありました。
諦めず、強い「想い」でブランディングに取り組んだのです。

中小企業 ブランディング 成功事例

あの時、社長が「どうせ売れないから」と諦めていたら、売上10倍の商品を生み出すことはなかったでしょう。
やはり、やり抜く強い「想い」が成功へと導いてくれる、ということです。

いまや、H社の発展を見て、大手企業に努めていた優秀な若手の人財も、H社に転職応募するようになってきました。
カテゴリーキラーを生み出すことで自社のブランディングに成功すれば、商品はもちろんのこと企業価値も押し上げ、人財や組織にまで影響するようになるのです。

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