社長や経営者であれば、自社の経営に対して何かしらのビジョンは持っているでしょう。
しかし、そのビジョンを社内で「共有できているのか」はまた別問題として大切です。
その問題に向き合うためにも、やはり「ビジョンの明文化」が必要になります。
ビジョンを明文化する必要性
社長や経営者の中には、
「自分の理想や会社が目指しているものは、言わなくともわかってくれている」
と感じている人がいます。
むしろこのようなタイプの方が多いかもしれません。
「わざわざ言葉にせずとも、社員ならわかってくれているはず」との思いは社員を信頼していることの表れかもしれませんが、その理想を明文化していなければ、社員をはじめ他人は理解できないこともあるのです。
そもそも、
「わざわざ言葉にする必要はない」
「自分を見ていればビジョンくらいわかる」
と経営者が考えるのは、ナンセンスともいえるのではないでしょうか。
人が何を考えているのか、行動だけでその全てを把握することはできません。
ましてや社長と社員、経営者と社員では視線が違います。
社長や経営者は会社に関する決定権を持っていますが、社員はそうではありません。
立場によって物事の解釈の違いもあります。
自身に明確なビジョンがあるならば、それを明文化しなければ、社長や経営者の考えは浸透しないでしょう。
ビジョンを明文化しないデメリットとは
ビジョンを明文化するメリットは、さまざまなところで説明されていますが、ここではビジョンを明文化しないことのデメリットをご紹介しましょう。
会社としてのビジョンを明文化しないと、社員の中には
「こうしたほうがよいのではないか」
「うちの会社は大丈夫なのだろうか?」
といった不安やストレスを抱えることがあります。
ビジョンを明文化しておかないと、自分がやっていることが正しいのか間違っているのかわからないまま、ただ仕事を続けているだけの状態に陥ります。
そこでビジョンを明文化することにより、不安やストレスを抱える社員に対して、目標・ゴールを設定できるわけです。
すると
「もっとこうしてほしい」
「ここをこうしたほうがよいのでは?」
といった、意欲のある意見が、社員から出てくることにもなるでしょう。
さらにそれだけ意欲が見える社員は、具体的なビジョンの達成に向けて、自分のスキルをどのように発揮すべきなのかも見えやすくなります。
社員は「会社の理想」を言えますか?
自分の会社の社員に「会社の理想は?」と尋ねた時、果たして社長や経営者と同じビジョンを口にできる人が、どれくらいいるでしょうか?
もし会社としてどのようなビジョンを持っているのかわからない社員が多いようであれば、まずは社員との意思疎通という観点からも「ビジョンの明文化」を行ったほうがよいでしょう。
本気の想いは伝わる
どんなことにおいても、本気の想いは誰にでも伝わります。
それは企業経営においても同じことが言えます。
つまり、社長や経営者が熱意を持って社員たちに「自分はこういったビジョンを持っている」と熱弁したり、あるいは定期的にしっかりとアピールするなど「明文化」することによって、社員たちは「社長は本気なんだな」と感じます。
たとえば「報告」として紙一枚で済ませるよりも、朝礼や会議で社員の前に立って「自分はこういったことを目指している」と話したほうが、社員にその熱意が伝わるでしょう。
経営者がビジョンを持つことはとても大切ですが、ビジョンを明文化する際、自分の「本気度」も伝わったほうが、社員にとっても目標がより明確になるはずです。
人の気持ちを動かすためには、数値やデータ以上に「熱意」が大切なのです。
ビジョンは数値目標ではない
経営者にとって、ビジョンを明文化することは重要です。
しかし、ビジョンとは数値目標ではありません。
たとえば「年商100億を目指す」。経営者としてそれくらいの熱意を持つことはとても大切ですが、数値目標とビジョンは決して同じものではありません。
では、「ビジョン」とは一体何を意味する言葉なのでしょうか?
「年商100億円を目指す」
「株式上場」
「販売台数〇〇代到達」
といったものは、経営者や社長としてのモチベーションを上げるものにはなりますが、決して「ビジョン」ではありません。
ビジョンとは数値目標ではなく、例えば
「この商品を使用した人が便利だと実感してもらい、当社の商品をもっともっと使ってほしい」
「あそこの商品じゃないとダメだ、と思われるような唯一無二の存在になりたい」
といったように、いわば理想の状況や状態こそ「ビジョン」と呼べるものです。
数字よりも大切なビジョンとは
企業経営のためには、数値目標は大切です。
しかし、ビジョンを明文化する理由は、自分だけではなく、そのビジョンを達成するために社内で会社の理想を共有すること。
数値目標は一見わかりやすいですが、数字だけを見ても自身が取るべき行動に直結させらない社員も多いのではないでしょうか。
「売上100億円目指す!」と社長や経営者が発表したとしても、社員にとってはピンと来ないケースも多いですね。
それよりも「消費者に必要とされる」「サービスを提供してお客を笑顔にする」といったビジョンのほうが、社員としてはわかりやすいものです。
もちろん、どれだけ自社の商品やサービスがお客様から支持されたとしても、実際に売上が伴っていなければ意味はありません。
経営者や社長が数字にこだわるのも、企業経営の現実を見ているからです。
しかし、社員にとっては数字だけを目標に設定されてもピンとこない場合があります。
その数字を達成するために何をするのか。
その目的を果たすために必要なのがビジョンであり、それを明文化することが大切なのです。
まとめ
ビジョンの明文化は、社内の共通意識を生み出すだけではなく、社員のモチベーションを左右するものです。
社員のモチベーションが上がるような、ワクワクするビジョンや、積極的に頑張りたいと思えるようなビジョンを明文化できれば、おのずと会社は良い方向に進むはずです。