業績が好調であれば、「自分がやってきたことは間違っていない」と、経営者は安心感を持つかもしれません。
しかし、業績が好調な時こそ、“次の一手”を考えることも必要です。
そこで、ブランディング戦略に基づき、じっくりカテゴリーキラーを生み出して成功を収めた、とある企業の例をご紹介します。
きっと、企業経営を成功させるためのヒントが、いくつも隠れているはずです。
目次
なぜ業績が好調なのに不安なのか?
来店型の店舗サービスを行っているF社から、ご相談を受けた時のお話です。
F社の事業内容は、整体やトレーニングジムなどの運営。
経営者はまだ30代と若く、とても物腰が柔らかい方でした。
相談に来られた時、会社は“絶好調”といえる状態でした。
都内を中心に複数店舗を展開しており事業は順調でしたが、それでも経営に対して不安があったようです。
社長は、こう言いました。
「業績は順調ですが、なぜ順調なのか、その理由がわからないんです」
業績が順調なうちにやるべきこと
業績が好調な理由がわからないから不安――。
これは一体どういうことでしょうか?
実は、好調な理由が自分のなかでわかっていれば、その好調を維持することができます。
その理由を分析し、さらに新しいヒット商品・サービスを生み出し続けることが可能になります。
反対に、業績が好調な理由をわかっていなければ、気付かないうちに売上は下がっていくでしょう。
もちろん、なぜ売上が落ちているのかもわからないまま。
そこでF社の社長は、業績が好調なうちに事業を分析し、戦略を組み立てられるようになりたいと、相談に来られたのです。
余力がある時こそ経営を見直そう
相談に来られる会社には、主に2つのケースがあります。それは、
- 売上が落ちてきたので、なんとか回復させたい
- 利益が出ている間に次の戦略を練っておきたい
多くは①のケースです。つまり、相談に来られた時点で、会社の経営はピンチに陥っています。
もちろん、①のケースでも相談に来られた方には、どうすれば業績を回復できるのか、指導させていただきます。
対して、F社は②のケースです。実は、②の段階で来られたほうが、いろんな戦略を練ることができることを、ぜひ知っておいてください。
なぜなら、①の状態に陥ると、どうしても人は目先のことを優先しがちです。
どんなアドバイスをしても、余裕のなさから「今すぐ何かできることを・・・」と求めてしまいます。
実際、そのような経営者が多いですね。
しかし②のように、まだ余裕がある時のほうが、いろんなアイデアが生まれますし、また他の人の話にも耳を傾けることができるものです。
ブランディング戦略で売上が1.5倍に
業績が好調である時に来られたF社の社長には、ブランディング戦略に基づき、カテゴリーキラーを生み出し、成長させていくための方法を説明しました。
その結果、F社はカテゴリーキラーを生み出してブランディングに成功。さらに続々とカテゴリーキラーとなるサービスを創り、なんと半年で売上が1.5倍にアップしたのです。
好調であった事業が、さらに成長を遂げました。
では、どのようにしてF社は、売上を1.5倍にアップさせることができたのでしょうか?
社長と社員のブランディング戦略
F社の社長は、説明を受けたブランディング戦略について、しっかりと理解していきました。
そして、社員に対して自ら、ブランディングとカテゴリーキラーづくりを指導しました。
この時、もしかしたら社員が他の第三者からブランディングを指導されていたら、ここまで売上はアップしていなかったかもしれません。
社長自ら、社員にブランディングを指導したからこそ、社員には会社の強いビジョンと具体的なシナリオが伝わり、それを実践することによって、売上が1.5倍にもなったのでしょう。
そしてF社は、さらに新しい事業に着手することになります。
業績が順調なうちに次の戦略を考えることで成功を収める――F社は、これを体現してみせたのです。
新事業も好調、その理由は?
F社は続いて「放課後デイサービス」の事業を立ち上げ、1店舗目を出してすぐに成功。
さらに2店舗、3店舗と事業が拡大していきました。
これまでとは異なるジャンルの新事業を成功させた要因は何でしょうか?
それは、新事業でもブランディング戦略のもと、カテゴリーキラーを生み出したからです。
どのような事業であっても、カテゴリーキラーを生み出すことはとても大切です。
もちろん、それは決して簡単なことではありません。
多くの経営者が、カテゴリーキラーづくりが大切だとわかっていても、実際にカテゴリーキラーを生み出し、成長させていくには相当の時間を要します。
カテゴリーキラーを生むコツをつかむには、2~3年はかかるかもしれません。
F社の社長は、まず来店型の店舗サービスでブランディングに成功し、そこで得たカテゴリーキラーづくりのコツを活かして、放課後デイサービスという新事業でも売上を伸ばすことができました。
好調な理由を分析し、理解したからこそ次の事業でも成功することができた、典型的な例といえるのではないでしょうか。
ブランディングを成功させる強いビジョン
F社の社長には、ブランディングを成功させるために必要な「強いビジョン」がありました。
それは
「子どもたちの未来を考えたサービスを提供し、業界の手本となる」
というもの。
そのビジョンをもとに作りあげられた戦略方針を見せてもらうと、具体的で完成度の高い経営戦略が描かれていました。
特に、カテゴリーキラーを生み出すために必要な要素がふんだんに詰まっていたのでした。
まとめ
強いビジョン設定をもとにカテゴリーキラーを生み出し、事業を成功に導いた経営者のお話をご紹介しました。
F社の社長の素晴らしいところは、業績が好調なうちに、好調な要因が何であるかを分析し、次の戦略に活かした点です。
経営者が自社の事業展開を見直すのは、たいていピンチの時です。
しかし業績が不振の時ほど、しっかりとした戦略を考える余裕はありません。
そのため、経営者は業績が好調な時にこそ、次の一手を考えてください。
そこに事業を成功に導く秘訣があるはずです。