ブランディング戦略に基づき、自社の強みを活かした「カテゴリーキラー」を群としてのカテゴリーブランドへと発展させるためには、同一カテゴリーにてヒット商品を3つ以上生み出すことが必要です。
そうしてカテゴリーブランドが確立されれば、「あの会社は〇〇に強い」と認知され、営業活動も行いやすくなるでしょう。
しかし、一つの「ヒット商品=カテゴリーキラー」が突き抜けることによって、カテゴリーブランドの確立に成功した企業もあります。
そんなブランディングの成功事例をご紹介します。
目次
京セラのブランディングとは?
京セラ(旧・京都セラミック株式会社)といえば、電子機器、情報機器、通信機器などのメーカーとして、大きな知名度を誇る会社です。
その京セラが大企業に成長した要因としては、一つの武器をとにかく徹底的に活かしたことが挙げられるでしょう。
今でこそ様々な製品を生み出している京セラも、創業当初に持っている技術は、ブラウン管の絶縁材料という、一つの商品に関連するものだけでした。
その技術も、松下電子工業(現在のパナソニック)との関係から、松下電子工業のライバル社には売り込むことができませんでした。
そこで京セラはセラミック技術をもって、松下電子工業のライバルである、東芝や日立の研究所に営業したそうです。
結果、京セラは松下電子工業のブラウン管の仕事だけでなく、他にも一つずつ商品を生み出し、さらに技術力が高まっていくのでした。
新しい技術を元に、さらに強みを伸ばした結果
様々な新しい技術が京セラに蓄積されても、京セラはセラミック分野で勝負を続けました。
あれこれ手を伸ばすのではなく、セラミックス技術に特化してサービスを行ったからこそ、京セラは「セラミックに強い会社」としてカテゴリーブランドの確立に成功したのです。
もしも新しい技術と出会った際、「セラミックよりもこっちだな」と手を伸ばしていれば今の京セラはなかったことでしょう。
とある板金屋のカテゴリーブランドの確立
板金屋として創業した、とある建築資材の金属加工メーカーもまた、カテゴリーブランドの確立に成功しました。この板金屋も一つの技術、つまり「カテゴリーキラー」を武器にカテゴリーブランドの確立に成功した会社です。
このままではという危機感
この板金屋は、とある材料を使うことによって建築外装材の一部となる商品開発に成功。
大ヒットを記録し、いわば「カテゴリーキラー」を手に入れました。
しかし、建築市場の縮小によってこのままでは成長は難しいだろうとの思いもあり、強みを活かした新しい商品の開発に着手したのです。
一年ほどの試行錯誤がありました
新商品の開発や研究は進められていましたが、それらはカテゴリーキラーを活かしてはいるものの如何にして「カテゴリーブランド」として認知されるのかに苦心していました。
ヒット商品を生むならカテゴリーキラーにこだわらない方が良い。でも、カテゴリーキラーにこだわることによって自社の強みをより鮮明にとの思いもあったのです。
そこでターゲット、ニーズ等マーケティングに力を入れること1年あまり、新規の顧客の獲得も含めて様々な試行錯誤を繰り返したのです。
結果は「カテゴリーブランド化」の成功
自社の「強み」を活かす方向での新規開発は、マーケティング視点で徹底した戦略を考えました。
結果、見込み客を5,000件以上獲得。購入単価も1.4倍を記録するなど建築外装材分野における「カテゴリーブランド化」に成功しました。
ここでも、マーケティング等を行わず、売れているからという理由で安易に同じような商品を開発するだけではカテゴリーブランド化は難しかったことでしょう。
自社の強みをどのように活かすのか。
この着眼点も大切です。
模型業界での実例
とある模型会社のお話です。
この模型会社は業界の中で歴史があり、いくつもヒット商品を生み出していましたので、既に「模型商品」という点においてはカテゴリーブランドを確立していました。
しかし、そこからもう一歩踏み出し、新しいジャンルに挑戦することで、新たなる「カテゴリーキラー商品」を生み出すことに成功しました。
新規事業の主役はドローン
様々なアイディアが出た中で、こちらの模型会社が選んだ新しいカテゴリーはドローンでした。
しかし、ドローンはすでに市場にも登場していました。
まだまだドローンが大きな注目を集める前であればいざ知らず、それなりに知名度を高めている中でただ単にドローンを販売するだけでは意味がありません。
しかし、「模型会社」としての着眼点、さらにはそれまでの強みをドローンに付与したのです。
それは「レース専用ドローン」です。
ドローンの常識と自社の強みの融合
ドローンといえば空高く飛ばして空中撮影できるものというイメージが定着していました。
しかし、この模型会社はドローンを高く飛ばして撮影するのではなく、「速さ」を競うものにしました。
ドローンというよりも、ちょっとしたSFテイストで模型としての操縦席もあるなど、それまで模型会社で培ったノウハウをあますことなく投入したのです。
まったく違うジャンルではないんです
模型会社がドローンの開発に力を入れる。一見、「カテゴリー違い」と思うかもしれませんがこちらの模型会社は長らく「レース車」の模型を開発していました。
そのため、ドローンでも「レース」に特化することで「レースができるアイテム」としてカテゴリーキラー商品として成功したのです。
事実、このドローンでのレースはたくさんのメディアにも紹介された程。
自社の強みである「レース用の模型」を新しいカテゴリーに応用することで、突出したカテゴリーキラーを生み出せた成功例です。
まとめ
このように、当初はまだまだカテゴリーキラーだけしか持っていなかった会社でも、培った強みを活かして、新しいカテゴリーや独自のアイデア等を元にビジネスを展開することによって、いくつものカテゴリーキラーを生み出すことができます。
先に紹介した企業が、これらカテゴリーキラーを群としてカテゴリーブランドの確立に成功した理由は、「自社の強み」を何よりも理解し、既存市場のみならず、新しい市場にも果敢に挑戦したからこそです。