経営視点

中小企業のブランディングに必要な「ポジショニング」とは?

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私はブランディング戦略とカテゴリーキラーづくりについて10年間、約300社の中小企業の経営者にアドバイスをしながら、積み上げてきたものがあります。
それは、

「中小企業に対して、売り方の指導はもとより、強い商品・サービスそのものを生み出す、カテゴリーキラーづくりのお手伝いができるコンサルタント」

という唯一無二のポジショニングです。

そこで、ブランディングのためのポジショニングについて、ご説明します。

中小企業 ブランディング ポジショニング

唯一無二の存在になるために必要な「ポジショニング」

ある時、中小企業向けのビジネス誌を発行しているある出版社の編集長が取材にいらっしゃり、そのビジネス誌上で、私が提唱している企業ブランディングに必要な考え方と、過去に指導した企業の成功事例をいくつかご紹介いただきました。

編集長からは、
「中小企業向けに、商品・サービスそのものの戦略づくりから売り方までを一貫して指導できて、かつ実績を多数持つ会社は他にありません。いろいろな企業を探してはみたのですが、結局は貴社にたどり着いてしまいます」
と言われました。

その時「やはりこの領域で本気で指導をしている人がいない」ということを改めて認識しました。
もっと努力を積み重ねて、より多くの中小企業の経営者のサポートができるように頑張ろう、と決意を新たにしたのです。

中小企業 ブランディング サポート

お客様が本当に求めている分野であり、かつ競合が手を出さない状況、手が出せない領域をどんどん掘り下げていくことで、どんな会社でも唯一無二の存在になっていきます。
これは、大企業・中小企業にかかわらず、どこの会社の商品やサービスでも目指すべき立ち位置(= ポジショニング)です。

自社の価値を高めていくブランディング戦略にとって、この「ポジショニング」というものは、とても大切なのです。

他と違うことをやらないといけない!

では「ポジショニング」について、もう少し理解を深めていきましょう。

たとえば、あるところに5,000人が住む町があります。
ここに1軒、とても繁盛しているA歯医者さんがありました。

しかしある日、この町にもう1軒のB歯医者さんができたため、A歯医者さんの売上は半減してしまったのです。
その後さらにC歯医者さん、D歯医者さんと歯医者さんが2軒増えてしまいました。
結局この5,000人の町には歯医者さんが4軒もできてしまい、患者さんを奪い合う状況になりました。

A歯医者さんの売上は当初から比べると4分の1にまで下がってしまい経営は悪化、「このままでは経営存続が厳しい」という状況に追い込まれました。
そこで、A歯医者さんは「どうにか歯医者を続けられるように、この状況を切り抜けたい」と真剣に考えました。

中小企業 ポジショニング 売上

売上対策として、WEBマーケティングに投資したり、古くなっていた店舗を改装したり、とりあえず思いつく対策をしましたが、多少の効果はあっても劇的に売上を改善できるような勢いはありません。

しかし、もう一度立ち止まって考えてみると、A歯医者さんは大切な視点に気が付いたのです。

「患者数が4分の1まで減り、経営が厳しくなってから、つい患者さんの集客ばかりに目を奪われてしまった。
でもよくよく考えれば、うちは他の歯医者と同じようなことをやっている。同じような内容をいくら宣伝しても無駄だ。
この町には同じような歯医者さんが4軒もある。その状況は変わらない。
だったら、集客のために無駄なお金をかけず、うちが他の歯医者と違うことをやらないといけないのではないか?」

ポジショニング=自分の得意分野で差別化していく

A歯医者さんは、そこからさらに考えを深掘りしていくうちに「私は子どもが大好きだから、子ども専門の歯科医院になろう!」と思いつきました。

その町の人口動態を調べると、人口は5,000人ですが小さな子どもが多い町でした。
そしてA歯医者さんは「小さなお子様が安心して来られる歯医者さん」として生まれ変わったのです。

院内にキッズルームを設け、店舗イメージも動物のキャラクターを使い雰囲気を和らげ、「子どもにとって歯科治療が怖くなく、痛くない、やさしいイメージ」というコンセプトで改装しました。

さらに「小さな子どもを持つ親御さんも安心して来院できるように」と、細かいところまで配慮をしました。

中小企業 ブランディング ポジショニング 改善

A歯医者さんが、他の3つの歯医者さんと差別化をした成果はすぐに現れました。
新規の患者さんがどんどん来院し、売上はみるみるうちに回復していったのです。

A歯医者さんの差別化からの発展を見ていたまわりの歯医者さんも「うちも他の歯医者と違うことをやろう」と思い始めました。

B歯医者さんは「きれいな歯になってもらいたい」という想いが強かったので、審美歯科を中心に、C歯医者さんはインプラントの技術に長けていたのでインプラント専門に、D歯医者さんは歯の矯正に特化した歯医者さんになったのです。

ポジショニングの本質は「成熟社会の役割分担」

こうして人口5,000人の町は、4つの歯医者さんができてお客を奪い合っていた状態から、非常に質の高い歯科サービスを受けられる町に変化したのです。
その結果、それぞれの専門性がある歯医者さんに、隣町や遠方からも「高度なサービスを受けたい」という人が集まってくるようにもなりました。

それぞれの歯医者さんは、集客にお金をかけなくても、患者さんがしっかりと集まってくるようになったのです。
さらにその後は、歯医者さん同士で患者を奪いあうのではなく、お互いに専門分野の歯医者さんを紹介し合うようにもなりました。

これが「ポジショング」をつくっていくイメージです。この5,000人の町の歯医者さんは4軒ともに、それぞれの「ポジショニング」を築いたのです。

「ポジショニング」の本質は、奪い合いや戦い、また独占するというようなギラギラした発想ではなく、『成熟社会の役割分担』です。
この考え方は、穏やかで互いを想い合える日本人らしい考え方ではないでしょうか。

ポジショニングで誰もが幸せになれる

お客さんの奪い合いをするのではなく、各企業が独自のポジショニングをすることで、社会的な役割分担をすることになります。
各企業が、社会や業界に対してどんなお役に立てるのか、と奉仕の心で人間的に考えていくと、よりよいアイデアが浮かんできます。

どの業界も競合がたくさんあり、企業の経営者は苦労しています。

中小企業 ポジショニング ブランディング 経営者

その時、「競争しよう、勝とう」という意識よりも、自らがあたたかい奉仕の心で「お客様、社会、業界のお役に立ちたい」という気持ちを持ち、自社のポジショニングを考えてみてはどうでしょう?

きっとよいアイデアが出てきますよ。
そして、それが自社のブランディングに繋がっていくでしょう。

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