以前お手伝いさせて頂いたY社は、ほとんど売れなかった「紙ひも」を、コンセプトから大幅にリニューアルしてブランディングし、「古紙回収用のにぎっても手が痛くならない平らな紙ひも」という大ヒット商品に変身させました。
こういったケースでは、商品を生み出したあと、いかに効果的に売り込みをしていくかを考えます。
そこでY社が実践した、びっくりするほど売れる営業方法をご紹介します。
目次
展示会での3分のプレゼンによって成功を収めたY社とは?
Y社の紙ひもは、商品のリニューアルも完了し、いよいよ販売へ向けての準備をしていくことになりました。
Y社が希望する売り込み先は、全国のホームセンターを中心とした小売店です。
商品の売り込みをする時は、どのような方法で売り込むのが効果的なのでしょうか?
いきなり店舗を訪ねてプレゼンする「飛び込みセールス」も一つの手法です。
各店舗にダイレクトメールを出したり、業界紙で広告したり、売り方を考えていけば、さまざまな手法があります。
しかし、最も有効なのは、全国のバイヤーが集まる場を使ってアピールすることです。
そのような機会として「展示会」がたくさん開催されているので、ぜひ展示会を活用していきましょう。
Y社も全国のホームセンターのバイヤーが一斉に集まる大型の展示会に出展することになりました。
展示会といっても、それほどお金をかけないように小さなひとコマを契約しての出展です。
ここで、展示ブースが小さいからといって、引け目を感じる必要は全くないです。
これまでの経験上、小さなひとコマでも上手くやれば、しっかりと結果を出すことが可能です。
近年「展示会を成功させたい」という相談が非常に多くなりましたが、展示会は上手く活用すれば、一気に販路を拡大することが可能です。
これまでにも展示会でどんどん新規の販路開拓をして、着実に売上を上げている企業がたくさんありました。
大切なのはバイヤーの本質的なニーズを知ること
Y社の、展示会に向けての準備が始まりました。
私たちは、紙ひもの用途や良さを伝えるためのPOPなど、小売店での展開イメージをしっかり作るようアドバイスをしました。
すると社長から、「そのような店頭のPOPなどは、売れてから用意すればよいのではないですか?」という意見が出ました。
確かにそれも一理ありますが、展示会でバイヤーは常に、売れそうなものをリサーチしています。
売れそうなものを得ることが、バイヤーの本質的なニーズです。
プレゼンテーション側は、バイヤーに「この商品は売れそうだ」というイメージをしっかり付けさせることが重要。
売れそうな商品だと伝えられなければ、いつまでたっても売れないのです。
展示会でバイヤーの心をつかむ
展示会の準備は、しっかりと丁寧に企画をつめていかなければ効果は出ません。
大切なことは、自社の展示ブースの前をふらっと通るバイヤーの心をつかむために、最大限の努力をして臨むこと。
そのワンチャンスを活かすのです。
Y社では、展示会までに説明用のパネル、パンフレット、小売店での展開イメージなどをしっかりと作りこんでいきました。
さらにY社は、この展示会内で開催をされる新商品コンテストにも応募することにしました。
新商品コンテストには70点以上の商品の応募があり、そこから一次選考を通過した商品にプレゼンテーションの資格が与えられます。
プレゼンテーションは、全国のバイヤーを目の前にして、1社につき3分間の時間が与えられます。
つまり「たった3分で全国のバイヤーに売り込みができる」という、すごい権利なのです。
プレゼンテーションで大企業に勝つ
Y社の紙ひもは、新商品コンテストの一次選考を通過して、プレゼンテーションのチャンスを手にしました。
大手企業の新規商品がたくさん出品されているコンテストで、Y社の紙ひもが一次選考を通過したことは快挙です。
本番のプレゼンテーションは、たった3分しかありません。
社長が時間内に商品の魅力を伝えきることができるかが不安で、天に祈るような気持ちで見守っていましたが、社長はしっかりとポイントを押さえた説明をしていました。
そして・・・我々と一緒に事前にプレゼン準備をした成果があり、コンテストでY社の紙ひもは、見事金賞に輝いたのです!
この結果、Y社の小さな展示ブースには全国のバイヤーさんが押し寄せることに。
どんどん注文が入り、これまで長く滞留していた在庫は一気になくなってしまい、すぐに追加生産しなければならなくなりました。
何年も売れなくて持て余していた紙ひもは、展示会からほんの数日で、あっという間に売れていったのです。
さらに、コンテストに皇室の方が見学に来られていて、金賞を取ったY社の紙ひもを買いたいと言われました。
社長の奥様は「皇室の方に買っていただくわけにもいかないから」と商品を献上することになりました。
ここでご紹介した、「全く売れなかった商品が売れるようになる」、このプロセスは全て実話です。
一番驚かれたのはY社だったでしょうが、こんなに早く結果が出るとは、私にとっても想定外でした。
Y社の社長と奥様が一生懸命になって、紙ひもにかける想いが成功を引き寄せたのです。
それだけお二人には、商品や会社に対しての強い「想い」がありました。
やる気と情熱のある社長夫妻が会社を救った
60歳過ぎたご夫婦が、地方からコンテストのために都心に出て、一生懸命に自社の商品をプレゼンテーションしました
ここまで頑張っているわけですから、私も何としてもこの紙ひもが売れてほしいと願っていました。
日ごろ相談を受ける経営者には、ご高齢の方も多いですが、強い「想い」を持って経営をされている方は、年齢に比例せず見た目も気力も、まったく若い方に負けていません。
会社や商品に対する強い想いが、生きがいとなって活力がみなぎっているようです。
強い「想い」を持つ経営者に出会うと、日本には本当に素晴らしい先輩経営者がたくさんいると思い、私自身も勇気づけられます。
Y 社の社長は、売れない商品をカテゴリーキラー商品化して、それをブランディングすることに成功し、会社の運命を大きく転換させたのでした。